葉酸は、妊娠前から意識して摂取することが理想的といわれます。葉酸の作用は、赤ちゃんの成長に大きな影響をあたえますが、具体的にはどのような働きがあるのでしょうか。
ここでは、葉酸が妊娠前の体にあたえる影響と、妊娠の仕組みを詳しく解説します。妊娠を希望する方や妊娠の可能性がある女性は、ぜひチェックしてください。
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妊娠の仕組み
妊娠とは、卵子と精子が受精した受精卵が子宮内膜に着床して、赤ちゃんとして発育する状態をいいます。卵巣で作られた卵子は、月に1度の周期で卵巣から卵管の先端にある卵管采(らんかんさい)へ飛び出す排卵がおこなわれます。卵管采に移動した卵子はそこで24時間ほど生きています。
性交により、膣内に射精された男性の精子は、自らの力で卵管に向かいますが、精子の寿命は3~5日ほどであり、無事に卵管まで到達できる精子は全体の約1%です。卵管で出会うことができた1個の精子と卵子が合体できると、受精卵になり28時間以内に細胞分裂が始まります。
受精卵は1週間~10日ほどかけて子宮へ移動しますが、この間に何度も細胞分裂を繰り返しています。そして、子宮内膜に着床して母体と結びつけると妊娠と判断がくだります。
受精確率と着床率とは
妊娠に必要な卵子と精子が受精できる確率は、約10~20%といわれます。射精された精子は3~5日生きていますが、卵子は約24時間しか生きていられないため、たとえ排卵日のタイミングで性交をしたとしても、妊娠できる確率は低いです。
また、受精卵が子宮内膜に着床できる着床率は、一般的には約20~30%といわれており、子宮以外の部分である卵管や卵巣に着床した場合は、子宮外妊娠になります。
妊娠前の葉酸の役割
葉酸は、胎児が体を形成するための細胞分裂や細胞の成熟に深く関わる栄養素です。細胞に含まれるDNAは、活性酸素の作用によって遺伝子の情報伝達を阻害されることがありますが、そのような場合は酵素が修正のために活躍します。
葉酸には補酵素として酵素の働きを助ける働きがあり、遺伝子の情報を正しく細胞に伝えてDNAの合成をサポートしています。この葉酸の働きは、妊娠中の胎児の成長には欠かせないため、妊娠前から妊娠初期は特に多くの葉酸が必要といえます。
葉酸は妊娠前から始めることがポイント
葉酸を飲み始めるタイミングは、妊娠を予定する1か月前から通常よりも多く摂取することが理想的です。その理由は、病院で妊娠がわかる時期には、すでに胎児の成長が始まっているため、赤ちゃんの先天異常のリスクを低下させるためにも、妊活を始めた方や妊娠の可能性のある女性は、早めに葉酸の摂取量を増やすことが推奨されます。
葉酸摂取で神経管閉鎖障害の予防
DNAの合成を助ける葉酸の働きは、神経管閉鎖障害の発症を抑える効果が期待されています。神経管閉鎖障害とは、胎児の脳や脊髄が形成されるとき、細胞が集まる神経管の一部が塞がること発症する先天異常です。
神経管閉鎖障害は、脳や脊髄が正しく成長できなくなる病気ですが、葉酸を妊娠前から摂取していた場合は、神経管閉鎖障害を70~80%減らすことができるといわれています。ただし、妊娠前から葉酸を摂取していなかったことが、必ずしも神経管閉鎖障害のリスクを高めるということはありませんので、妊娠がわかってから葉酸の摂取を始めても遅くはありません。
妊娠前の葉酸の摂取量
妊娠前から妊娠初期にかけて、胎児の内臓や脳などが形成されるため、もっとも体が葉酸を必要とする時期です。葉酸は通常でも、1日に食事から240ugの摂取が必要とされますが、妊娠前はさらに葉酸サプリを1日に400ug追加して摂取することが推奨されています。
これは食品に含まれる葉酸だけでは体への吸収率が悪く不足しがちになるため、効率よく葉酸を吸収できる葉酸サプリと組み合わせることがすすめられています。
男性も妊娠前から飲むことが推奨される
葉酸は女性だけでなく、妊活中の男性も妊娠前から摂取することが推奨されています。葉酸は、精子の細胞分裂や生成にも深く関わるため、葉酸の作用で染色体異常の精子を減らし、精子の質を高めることにつながるからです。
不妊夫婦の原因は、約3割がパートナーの男性にあるといわれますが、葉酸が不足している男性は、妊娠の確率が低くなると考えられてます。また、胎児の先天異常である神経管閉鎖障害やダウン症の発症に、男性の葉酸不足が関係しているというデータもあり、精子に含まれるDNAの情報伝達や生成が正しく行えないことが原因といわれます。
妊活中の男性が摂りたい葉酸の摂取量とタイミング
妊活中の男性は、妊娠予定日の3か月前から葉酸を多く摂ることが理想とされます。女性よりも早い時期から葉酸が必要になる理由は、射精される精子は約80日前に作られた細胞が元になっているためです。妊娠前の男性に必要な葉酸の量は、1日に240~400ugとされます。女性と同様に、男性も食事と葉酸サプリを組み合わせて摂ることが推薦されています。
妊娠前はカップルで葉酸摂取がおすすめ
妊娠前にカップルで葉酸を摂取することは、妊娠をしやすい体を作り、赤ちゃんの先天異常などのリスクを下げる効果があるといえます。食事で摂る葉酸は、デリケートで体への吸収率が低いため、葉酸サプリと組み合わせて効率的に摂取するようにしましょう。