自然妊娠が難しく不妊治療を始めるときは、まず不妊の原因を知ることが重要です。不妊の原因の約50%は女性側にあるとされ、男性側の原因が約40%、男女に原因がある場合が約10%といわれています。
ここでは、不妊の原因になる女性特有の病気について詳しく解説します。不妊治療はできるだけ早く始めることがポイントです。不妊治療の取り組みとして、ぜひ参考にしてください。
Contents
検査で見つけられる不妊の原因とは?
不妊症は大きく分けると、不妊検査により原因が特定できる「器質性不妊」と検査を受けても原因がわからない「機能性不妊」に分類されます。妊娠は排卵した卵子と精子が受精して子宮内膜に着床することで成立しますが、このプロセスにある病気が原因で不妊症を起こしたものを器質性不妊といいます。
不妊の原因になる「排卵」の病気
不妊症の約10%は、卵胞が正常に育たないことや育っても排卵ができない、排卵障害だといわれています。不妊の原因になる排卵障害には、次のような病気があります。
視床下部性排卵障害
視床下部性排卵障害とは、ストレスなどが原因で女性ホルモンの分泌量をコントロールする脳の視床下部が正常に働かず、無排卵などの問題が起こっている状態です。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)とは、卵巣の中に卵胞が複数できて排卵が起こりにくい病気です。多嚢胞性卵巣症候群の原因は、はっきりとは解明されていませんが、内分泌異常や糖代謝の異常が関係していると考えられます。
高プロラクチン血症
高プロラクチン血症とは、本来は授乳時に分泌量が増えるプロラクチンというホルモンが、妊娠前に過剰分泌されている状態です。プロラクチンには、月経や排卵を止める作用があるため、無排卵や黄体機能不全を起こして不妊の原因になります。
黄体化未破裂卵胞症候群
黄体化未破裂卵胞症候群(おうたいかみはれつらんほうしょうこうぐん)とは、卵胞が成熟しても破裂せずに黄体化してしまい、排卵が起こらない病気です。
不妊の原因になる「卵管」の病気
卵管は精子を迎えて受精卵の発育や移動に関わる器官です。不妊の原因の約30%は卵管にあるとされ、次のような病気が関係していると考えらえています。
卵管閉塞・卵管狭窄
卵管閉塞・卵管狭窄とは、卵管がなんらかの原因で詰まったり狭くなったりしたことで、精子と卵子が移動できなくなる病気です。
細菌感染
膣から入ってきた細菌に感染したことが原因で、卵管が炎症を起こして不妊症になることもあります。細菌感染の原因菌には、クラミジア、梅毒、淋病、大腸菌などがあります。
卵管采周囲癒着
卵管采周囲癒着とは、卵管の先端の周囲に癒着が起こり、卵子をキャッチする卵管采が動けなくなっている状態です。
ピックアップ障害
ピックアップ障害とは、卵子を卵管の中へ拾い上げる卵管采が、なんらかの原因で機能できていない状態をいいます。ピックアップ障害では、卵管采が小さかったり、ほとんど存在していなかったりすることもあります。
不妊の原因になる「子宮」の病気
子宮で発生した病気が原因で機能が低下すると、子宮内膜への着床ができなったり、着床が続かなくなったりして妊娠が難しくなります。不妊症の原因になる子宮の病気は、以下のようなものがあります。
子宮筋腫
子宮筋腫とは、子宮の筋肉に発生する良性腫瘍のことです。子宮筋腫が卵管や卵管口に腫瘍ができた場合は、精子や受精卵が通れなくなり不妊症の原因になります。
子宮内膜ポリープ
子宮内膜ポリープとは、子宮内膜の一部にできたコブのような腫瘍のことをいいます。子宮内膜ポリープのほとんどが良性の腫瘍ですが、ポリープによって着床が妨げられることがあります。
先天性子宮奇形
先天性子宮奇形とは、生まれつき子宮が本来の形とは違う状態のことです。子宮奇形による妊娠への影響は大きくないといわれますが、流産を起こすリスクがあります。
子宮内腔癒着症
子宮内腔癒着症とは、子宮の内壁に癒着が起こっていることで、無月経や着床障害が起こる病気です。子宮内腔癒着症は流産や人工妊娠中絶の後に発生するケースがあります。
不妊の原因になる「子宮頸管」の病気
子宮頸管は、子宮の下部にある子宮と膣を結ぶ部分です。子宮頸管で次のようなトラブルが起こった場合は、不妊症の原因になります。
抗精子抗体
抗精子抗体とは、体の免疫システムが精子を異物と判断して抗体を作り、精子を攻撃をしてしまう免疫機能の異常です。
頸管粘膜不全
頸管粘膜不全とは、おりものを意味する頸管粘膜の分泌が悪いことで、射精後の精子が子宮内に侵入しにくくなる病気です。
不妊の原因疾患を予防するための注意点
加齢による卵巣や子宮の機能低下は誰もが避けることはできません。ただし、不妊は生活習慣が影響していることもありますので、病気を予防するためには、生活習慣を見直すことが大切です。子宮と卵巣を健康に保ち、ホルモンバランスを整えるためには、栄養バランスのとれた食事と体を冷やさないように気をつけましょう。また、適度な運動と十分に睡眠をとることも大切なポイントです。
不妊症は早めに治療を始めることで妊娠しやすい体を作ることができます。体調不良や気になる症状があるときは、婦人科で検診を受けることをおすすめします。